年に一回の登り窯の窯焚きが、無事に焚き上がりました。
と言っても、窯出しをしてみないと本当の焼き上がりはまだ分からないのですが、とりあえず事故もなく焚き終えてホッとしています。
焚き上げから一夜明けた窯は、窯焚きの熱気が嘘のようにひっそりとしています。
でも窯に近づくと、窯の中では静かな音が渦巻き、窯全体からは熱を発していて、まだ素手では触れないほど。
私達の登り窯は、一番下の燃焼室(胴木間)を含めて4部屋。それを下から順番に焚き上げていきます。
今回は69時間での焚き上げでした。
最初は胴木間の下からボチボチと焚き始め、窯全体をゆっくりと温めます。
登り窯は窯そのものが煙突のようになっているので、下で焚いていても炎がすぐに中へと吸い込まれ、煙突からはモクモクと黒い煙が。
登り窯の窯焚きは、この胴木間で全体の時間の約8割を焚き続けます。
この部屋を熱い熾でいっぱいにし、その排熱で上の3部屋を十分に温めていくのです。
火入れから24時間以上経った頃には、胴木間の中は1300度近く。
目も眩むような明るさと、服の上からも火傷をしそうな熱さ。
火入れの時の小さな炎がこんなにも大きくなるとは、にわかには信じられないほどです。
窯上部の火吹き穴からも、火入れ当初は小さく煙が出ていただけだったのに、温度が上がるとともに、「燭」と呼ばれる炎が吹き出してきます。
そして窯の中では熱い炎が渦巻き、器の表面の釉が溶け始めてキラキラと輝き始めます。
窯の中の色、明るさ、熱さ、器の光り具合、温度計の温度、そして窯の中から「色見」を取り出し、実際に釉が溶けているか確認して、下の部屋から順番に焚き上げていきます。
そうして一番上の3の間まで焚き上げて窯焚きは終了。
窯の焚口を全て粘土で閉じ、煙突も塞いでゆっくりと1週間かけて窯を冷まします。
200束以上準備した小割の赤松薪も、こんなに減りました。
でもこれは、1の間から3の間だけで使った薪。
胴木間では、この倍以上の赤松の薪を燃やしています。
私達は自分の山を持っていないので、常に村の方々の山に入らせて頂き、赤松を間伐して薪を得ています。
今回の窯焚きで使った赤松は、一昨年の秋に山から出して割りため、乾燥させておいたもの。
泰阜の山や森を守り続けてきた、この村の先人方があってこその窯焚き。
そして山仕事や薪割り、窯焚き全般を支え合ってきた仲間に感謝しつつ、みんなで1週間後の窯出しを待ちます。
(葉子)